軽く一息ついたときに見た四角く切り取られた景色は 淡い夕焼けを筆でひいた様に屋根の上に色を滲ませていた。 とっくに湯気の見えなくなったカップを口に運んで、 書きかけの葉書に目を落とす。 その隣には微笑んだ二人が刷り込まれた 見覚えのない名字の年賀状。 ――忘れられてると思ってた。 大学の頃の記憶が蘇る。 なんて書けばいいのだろう、 真っ白なままの葉書は当分埋められそうもない。
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