帰りの電車で、君に会った
読みかけのマンガを持つ手が止まった
彼女はまだ、僕に気付かない
プレーヤーの音量を絞って
電車の雑音に耳を傾ける
金属の立てる音すらも
今日は愛おしい
彼女は一人で吊り革につかまっている
ちっとも目に入らないマンガを視界の隅に
彼女のカバンにぶら下がった
ちょっと控えめなストラップを見ていた
夕日が反射してちょっと眩しい
車内アナウンスが僕の降りる駅を告げる
ちょっと乱暴に止まった電車のドアが開く
彼女はまだ、僕に気付かない
電車が発車する
僕の目の前を通過する彼女が
一瞬こっちを見たような気がした
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